映画『マローボーン家の掟』感想・考察 アニャ・テイラー=ジョイ

アニャ・テイラー=ジョイ

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原題:Marrowbone、2017年公開、1時間50分、製作国:スペイン、アメリカ

ありえないストーリー。なのに良質の心理サスペンスに仕上がっている。アニャ・テイラー=ジョイが出演しているので見てみたが、アニャはあくまでも助演。主演はマローボーン家長男役のジョージ・マッケイ(と兄弟たち)だ。では考察していこう。

映画『マローボーン家の掟』の疑問(ネタバレあり)

サムの母親はジェーンなのか?

サムの母親はジェーンで間違いない。なぜなら、母親の手紙にわりとはっきり書いてあるのだ。ジャックは「Jane will be Sam’s mother, as it was meant to be」と読み上げている。字幕には「ジェーンはサムのお母さんになるのよ」とあるが、「as it was meant to be」の部分がない。これは「初めからそういうことだったんだから」というような意味だ。1回見ただけで真の意味に気付くことはできなかったが、一家の事情を知ると意味を理解できる。

精神を患うジャックにアリーが薬を与えないのはなぜか?

アリーは第一には、ジャックが望んでいる状態(兄弟たちとずっと一緒にいる)を続けさせてあげたいのだろう。それに加え、アリー自身も兄弟たちとともにあることを望んでいるようだ。自分にも兄弟たちの声が聞こえる(比ゆだと思うが)と言うセリフもあるし、メイキングのYouTube動画では「アリーは単にジャックを愛しているだけでなく、兄弟たちも含めて愛している」と発言しているのだ。だけど、そのわりにはアリーと兄弟たちとの関係が丁寧に描かれていない。ジェーン、ビリー、サムとアリーが顔を合わせたシーンは1回(1日)だけだ。そんなシーンがなかっただけで他にも会う機会があったのかもしれないが、ちょっと描写が足りない気がする。

父親はなぜ家族を襲いに来たのか?

父親はお金には目もくれていないので、家族に復讐するためにやって来たと考えられる。告発したのがジャックだけだったとは知らなかった可能性もあるし、妻とジェーンを自分のものだと思っていたのであれば、自分を裏切ったと感じているのだろう。お門違いも甚だしいが、怒りからの行動に見える。

アリーというキャラクターは何のためにいるのか?

アリーは兄弟たちを外から見る存在として、視聴者に真実を提示するための手段として機能している。ジャックを支えるアリーの愛情はなくてはならないもののように見えるが、どちらかというと、アリーが存在することで「実際に存在するもの」と「実際には存在しないもの」が区別できるようになっているのだ。

ジャックとアリーはいつ付き合い出したのか?

父親の襲撃前には付き合っていることを示すシーンはなかったので、襲撃後に付き合い出したのだろうか?襲撃後のジャックは多重人格を発症している。そこで初めてあのようないい感じの恋愛関係になれるだろうか?シーンがないからといってまだ付き合っていなかったとは限らない(町への買い物シーンも襲撃前にはなかったが、買い物には最初から行っていたはず)。私は父親の襲撃前、それも母親の死後に恋愛関係に発展したと思った。というのも、遺書の「時が来たら愛に心を開いて」というメッセージがきっかけになったと思うのだ。ただし、母親が死んでから父親の襲撃まではあまり期間がないようにも見えるので、この点は謎のままだ。

映画『マローボーン家の掟』の感想

  • 「掟」という字幕は作中に一度も出てこない。ホラー映画としてのマーケティングなんだろうね。原題どおり『マローボーン』にすると意味がわからないし、まあ許容範囲。
  • マローボーン家の兄弟たちの演技がうまく、繊細な表情をする。ストーリーの重要な部分が実際にはありえないことなのに、「はああ?」と思いながらも再度見たくなる。あれはそれを狙ってる?
  • これはホラー映画と呼べる?ホラー的に怖いシーンが一つもない気がするので、スリラーとか心理サスペンスだと思う。
  • アニャが薄化粧でかわいい。個人的に今のアニャ(2025年)は美しすぎる気がするので、こういう素朴でしっかり者な感じのアニャが好きだ。アニャは多重人格の主人公をケアする役に縁があるね(2016年の『スプリット』)。

映画『マローボーン家の掟』のキャストトリビア

  • 撮影が終了したのは2017年の夏なので、画面の中のアニャは21歳くらい(『スプリット』撮影時は19歳)。
  • ビリー役のチャーリー・ヒートンとアニャは2020年公開の『ニュー・ミュータント』で共演。
  • ジェーン役のミア・ゴスとアニャは2020年公開の『EMMA エマ』で共演。ミア・ゴスは『EMMA エマ』のハリエット役も悪くはなかったが、本作のほうが唯一無二の存在感を活かせていた。あまりにもホラー顔で笑う。

見返すと、ジャックがどれほど苛まれていたのか気づくので、ぜひもう一度!

参考サイト:Motion pictures Research Gate

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