映画『アテナ』レビュー(2022仏)

アテナ

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原題:Athena 制作国:フランス

2022年公開(Netflix)1時間39分 

最初から最後まで緊張しっぱなし。99分間の混沌。

英語版のみ

こんな才能が今までどこにいた?フランスにいた!

  • 圧巻のオープニング11分。全編で本物の火炎瓶をぶん投げ花火と爆竹が飛び交う。
  • 長回しが生み出す臨場感と熱気。カメラが役者を執拗に追いかける、社会派アクションスリラー。
  • ネタバレは見たらダメ、絶対。説明がほとんどないので途中で調べたくなる。でもガマン!

あらすじ

フランスのアテナ地区。13歳のイディールが警官に暴行を受けて亡くなり、その様子が拡散される。しかし犯人は特定されていない。数時間後、軍人であり3兄弟の長兄アブデルは事件の調査を求めるが、次男カリブは犯人の警官の身柄を得るために、広大なアテナ団地で仲間とともに大規模な暴動を開始する。アブデルは住民の避難を促し、カリブの無茶を止めようとするが、アテナ団地は無法地帯と化し、機動隊との衝突が始まる……

『アテナ』の感想・トリビア

  • まさしくギリシャ悲劇!ヒエーッとなる。ロマン・ガヴラス(ロマン・ギャヴラス)監督はギリシャ悲劇を意識した演出だと述べており、悲しい展開になるとしか思えない筋書きなのだが、予想を超える衝撃的な展開に。すごい才能だな。
  • 長回しの効果は監督の狙い通り。長いワンシーンで緊張感を生み、視聴者が登場人物との一体感を感じるようにする、という監督の意図通りにこちらの心臓が跳ね上がる。
  • 長男アブデル役をダリ・ベンサーラが怪演。軍人として、3兄弟の長兄として、役割を果たそうとし、コントロール不可能な怒りに支配され、希望を失い精魂尽きる、そのすべての表情をただならぬ演技力でやりきった。ダリ・ベンサーラは1992年生まれのアルジェリア系フランス人。『007/ノー・タイム・トゥダイ』の敵役で出てたのか!2025年の『逃亡者を乗せた夜』もぜひ見てみたい。
  • 繊細にして発火性に満ちた次男サム。いやぁ、冒頭が本当にすごかった。当時新人のサミ・スリマンが熱演した。サムの中には火傷しそうなほど熱い社会不満があり、それを蒸気のように発しながら後先を考えない行為に踏み出す。サミは、大きな役ではないが2024年の『ビートルジュース ビートルジュース』にも出演している。
  • セバスチャンは無害な人に見えたのに。彼がなぜあんなことをしたのかは謎。そういう欲望があったということかな?
  • エキストラは団地の本物の住民。このあたりの裏話が明かされているのがNetflixの『アテナ:制作の舞台裏』。リハーサルシーンも必見。本当の大けがをした人はいなさそうだが、ほとんどの人が小さな傷を負ってそうな危険な撮影現場だった。
この動画の長い版(37分)がNetflixの『アテナ:制作の舞台裏』
  • 音楽がさらに緊張感を煽る。前半の機動隊との衝突シーンで流れている、怖いけどクセになる歌は「Assault」。YouTubeではこの音楽の制作者「GENER8ION」のチャンネルで聴くのがいいだろう(9曲目)。
  • ロマン・ガヴラス監督の次回作は『Sacrifice』。2025年9月にトロント映画祭で初公開される『Sacrifice』。クリス・エヴァンスとアニャ・テイラー=ジョイが共演する。

あまりにも衝撃的で心から離れなかった。また見よう。

ダリ・ベンサーラ出演作

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