映画『ヴィジット』レビュー M・ナイト・シャマラン監督・脚本・製作

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原題：The Visit 、2015年公開、1時間33分、製作国：アメリカ

『ヴィジット』のおすすめポイント
『ヴィジット』のあらすじ
『ヴィジット』の感想・考察
『ヴィジット』のトリビア

『ヴィジット』のおすすめポイント

シャマラン作品中ベスト3に入ること間違いなし！というか一番好きな作品
シャマランに笑わせされ、シャマランにビビらされる93分間の心理スリラー・ホラー。

『ヴィジット』のあらすじ

シングルマザーのロレッタは両親と険悪で、19歳のときに実家を出て以来15年間交流がない。ところがネットでロレッタを見つけた両親が、孫と1週間一緒に過ごしたいとコンタクトを取ってきた。孫のベッカとタイラー姉弟はまだ会ったことのない祖父母に会うために、子どもたちだけで遠くまで出かけることになる。姉弟は祖父母の奇行に戸惑うが……

『ヴィジット』の感想・考察

シャマランお得意のどんでん返し。ヒントはあったので勘のいい人は気づいたかもしれないが、筆者は完全にだまされた。単純なトリックを見事に決められたので、純粋に驚かされて気持ちよかった。本作は同監督の『シックス・センス』や『アンブレイカブル』と違ってB級なのだが、こっちのほうが断然好きだ。
演技がうますぎる主役の姉弟。未成年の俳優を選び、使うのが上手なシャマラン監督。『シックス・センス』のハーレイ・ジョエル・オスメントもそう。ベッカとタイラーが大人顔負けの演技力を発揮したことで怖さとおもしろさが増した。今回の姉弟役はアメリカ人の設定だが、俳優は2人ともオーストラリア人（2人の現在の状況は後述する）。
ラップ、ボイパ、マシンガントーク！シャマラン節が冴えわたる。よくしゃべる車掌さんだなと思ったら、タイラーの突然のラップにボイスパーカッションで合いの手を入れたり、なれなれしいお医者さんだなと思ったら、実は大事なことを教えてくれていたり、シャマランが好き勝手にやってる感がある。ラップは一字一句までシャマランが作ったそう。
一応ちゃんと怖い。ちょいちょい滑稽なシーンが入れ込んであるものの、「祖父母」の奇行がエスカレートしていくに連れて怖さが積み重なっていく。さすがシャマラン。
「断絶した家族の修復」も描かれている。シャマランは本作で断絶した家族の修復を描いたと述べている。ベッカは父親が出て行ったことで自分を価値がない存在だと思い込み、鏡で自分の姿を直視できなくなった。しかし襲ってくる「おばあちゃん」から身を守るため、鏡を凝視し、鏡の破片を武器にして戦う。タイラーは自分がアメフトの試合でタックルできなかったことが原因で父親が出て行ったと思い込み、潔癖症を患う。しかし菌に硬直しながらも「おじいちゃん」をタックルして姉を助ける。母のロレッタも両親を許したことが見て取れる。最後のラップシーンは姉弟が今回の経験すらも乗り越えたことを示すものだが、なんでこんな表現手法なんだよ……シャマラン最高だな。
シャマランが繰り返す「老い」というテーマ。2021年の『オールド』でも「老い」をテーマにした同監督は、本作でも老齢になると精神や体に何が起こるかというテーマを扱ったと言う。元々のタイトルとテーマは映画の中でも言及されていた「夕暮れ症候群（Sundowning）」だったが、祖父母を訪ねて何かが起こるというグリム童話のようなアイデアに変わったためタイトルを変更したとのこと。
シャマラン版ヘンゼルとグレーテル。シャマランはベッカがオーブンに入れられるシーンはグリム童話のオマージュであることを認めている（ヘンゼルとグレーテルでは、魔女がグレーテルをかまどに入れようとするが、グレーテルは機転を利かせて反対に魔女をかまどに入れる）。ちゃんと家に帰れてよかったね。

『ヴィジット』のトリビア

自由に作りたいので自費制作。低予算なので家はセットではなく本物の家を使った。シャマランが自費で作った作品をユニバーサル・ピクチャーズが購入し、映画は興行的にも成功した。
ベッカ役のオリヴィア・デヨングは成長してさらに美しくなり、U-NEXTで2025年10月に配信開始されるドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』に出演する。
タイラー役のエド・オクセンボウルドはとても大きくなり（インスタ）、オーストラリアを中心に数多くの作品に出演している。
シャマラン映画のお約束、監督本人の出演がなかった。シリアスな作品でも出演するくせに、いくらでも出れそうな作品には出ないシャマラン。

低迷していたシャマランの復活作。大好きだ。