映画『ウィッチ』レビュー(2015米)アニャ・テイラー=ジョイ

アニャ・テイラー=ジョイ

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原題:The Witch / The VVitch: A New-England Folktale 

2015年初公開(日本では2017年公開)、1時間32分

ホラー映画だけどそこまで怖くない。刺さる人には刺さる陰鬱な雰囲気の佳作。

あらすじ

魔女の存在が信じられていた17世紀のアメリカ・ニューイングランド。ピューリタン信仰にあつい一家が入植地から追放される。家族7人は森の近くに簡素な家を建て、狩りや牧畜、農業を行い、極貧の暮らしを始める。そんな中、長女トマシンが赤ん坊のサムにいないいないばあをしてあやしていると、ほんの一瞬目を閉じたすきにサムの姿が見えなくなる。この出来事をきっかけに家族に不和と疑心暗鬼が生じ、トマシンを魔女と疑い出す……

まだ見てないひと向け『ウィッチ』おすすめポイント

  • 魔女、罪、家族をテーマにしたどんより暗い作品。魔女が実在すると思われていた17世紀のアメリカで、集落から離れて暮らす敬虔なピューリタン一家が崩壊に向かっていく。掘っ立て小屋で暮らし傷んだとうもろこしを手にする。厳しい生活とすさんでいく心を目の当たりにすると、明るい作品にはない何かが心にしみを落とす。エガース監督が何年にもわたって徹底的に調査した当時の民間伝承を基にした作品。
  • 画面がとにかく暗い。監督が当時の生活の再現にこだわったため照明がひたすら暗く、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。
  • 10代のアニャ・テイラー=ジョイの透明感。出世作『スプリット』よりも前のアニャ。ストーリーや画面とは裏腹に、当時18歳のアニャの美しさが際立つ(2025年現在29歳)。17世紀のピューリタンが着ていた清貧な衣装をまとい、10代らしい透明感のある肌が印象的。頭巾も三つ編みもかわいい。
  • 2015年サンダンス映画祭監督賞。ノースマン』『ライトハウス』のロバート・エガース監督の長編デビュー作。2015年サンダンス映画祭で初公開され、監督賞を獲得した。
  • 賛否分かれる評価。外国の掲示板サイトでは、上質のホラー映画、怖い、大好き、繰り返し見たといったコメントも多くみられるし、「嫌い」というコメントもある。アメリカの映画批評サイト「ロッテントマト」では批評家の高評価が91%、観客の高評価は61%。低予算で興行収入は成功。好き嫌いは分かれるかもしれないけど、私はおすすめの作品。

『ウィッチ』の感想・考察

  • なぜ一家が魔女のターゲットになったのか?赤ちゃんが連れ去られたことをきっかけに家族が崩壊に向かっていくが、海外サイトの考察では、最初のほうでトマシンが家事をさぼったこと、両親に反抗したことなどを罪と考えて許しを請うた瞬間に神ではなく悪魔の耳にとまってターゲットとなったという分析があり、しっくりきた。赤ちゃんがいなくなる前にこのシーンがある。
  • お父さん以外はそこまで悪くない。海外の掲示板では家族それぞれが七つの大罪を犯しているという議論も見られる。そうなのかもしれないけどキリスト教の知識がない私にはピンとこない。唯一明快なのはお父さんの「傲慢」だろう。お父さん自身もその言葉を口にした。信仰にこだわり我を通して一家崩壊を招いたのは罪深い。裁判の場でケンカ腰なだけでは入植地を追放までにはならないはず。それまでにいろいろやらかしているのでは?赤ちゃんのこともさっさと諦め、銃も満足に使えないので狩りもできないなんて自己満すぎる。他の家族はというと、弟がトマシンの胸をガン見するのは確かに気持ち悪いと思った。でもこの一家のまわりには人が他に一人もいないんだし、年頃の少年が好奇心から見てしまったとも思える。母親も極貧の生活の中でサムがいなくなったことに耐えられずトマシンにきつくあたっている(だいぶひどいけど)。双子にいたっては憎らしいものの、まだチビちゃん。トマシンも家のことを相当がんばってる。父親だけが本当にダメ。
  • 画面が見えにくい。当時の再現にこだわる監督の演出なのは理解できるけど、大事なシーンで照明が暗いと15インチのPC画面では何が起こっているのかわからない。魔女(?)が最初に登場する場面にいたっては、脚本にも「ほとんど何も見えないほどに暗い」と書かれてる。この暗いシーンは魔女の軟膏に関係があるけど、1回見ただけでは理解できなかった(軟膏の成分についてはこちらに記載されている)。
  • 結局どうなった?ラストシーンでトマシンが微笑んだ後に苦しみにも似た感情を浮かべているように私には見えた。その後どうなったのか、結局どういうことなのか気になるので、監督に教えてほしい。
  • 服を着ていない後ろ姿は、おそらくアニャ・テイラー=ジョイ本人ではない。スタントを使ったという情報があり、他にスタントが必要なシーンは見当たらないことと、アニャは当時18歳であることから、このシーンはスタントと推測。
  • 撮影場所はカナダのオンタリオ州にあるかつての木材伐採の町キオスク。もう誰も住んでおらず携帯の電波もない場所……キャンプ場はあるらしいけど、どこに泊ったんだろう。
  • キャストリビアはこちら↓

こういう暗い映画って、なぜだか見たくなる。

ウィッチ(字幕版)
舞台は1630年代、ニューイングランドの不毛の荒れ地。暗い森のそばのへんぴな土地の一角に移り住んだ農夫とその家族が、不可解でおぞましい現象に見舞われる。農作物の不作や生まれたばかりの息子が行方不明になるなど不幸が続いた一家は、いつしかそれが...

*無断転載禁止

参考サイト:Newyoker Fandom Creepy Catalog

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